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WCAG 2.2が日本の基準に!JIS X 8341-3が約10年ぶりに改正へ〜ようやく。実質18年ぶりの更新?

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こんにちは、リベロジック代表の森本です。
今回はWebアクセシビリティの話です。

すでにいろいろな記事でご存じの通り、Webアクセシビリティの国内規格「JIS X 8341-3」が約10年ぶりに改正される見込みです。

今年度でいうと残すところあと半年!果たして本年度中に正式改正されるのか!
大変かと思われますが、WAICさんには是非頑張ってほしいところです。

ちなみに現行の「JIS X 8341-3:2016」という名称を見ると、2016年にアクセシビリティの達成基準が大きく更新されたようにも見えますが実際にはそうではありません。
Webコンテンツの達成基準は2010年版の時点ですでにWCAG 2.0と同じ内容でした。

2016年の改正はWCAG 2.0を国際規格化したISO / IEC 40500:2012との整合を取り、JISの規格本文を国際規格と一致させたことにとどまります。
つまり2016年に新しいアクセシビリティ基準が追加されたというよりWCAG 2.0を日本のJISとして整理し直した改正と考えるほうが実態に近いでしょう。

そして日本の場合タイミングの問題もありました。

JIS X 8341-3:2016が改正された約2年後の2018年6月5日には、モバイル・タッチ操作・ロービジョンなどWCAG 2.0では十分にカバーできていなかった部分がかなり補強されたWCAG 2.1がW3C勧告となります。
国際規格との整合もあるJISをW3Cの更新に合わせてポンポン改正できるものでもありません。
その結果、日本のJISはWCAG 2.1を正式な規格として取り込まないまま、今回WCAG 2.0からWCAG 2.2相当へ一気に更新される方向になります。

つまり「2016」という名前ではありますが、現在まで日本で使われてきた達成基準の土台は、実質的には2008年にW3C勧告となったWCAG 2.0です。

JISそのものは約10年ぶりの改正ですが、

達成基準の土台で考えると2008年から2026年まで約18年ぶり!

ようやく更新されるという感覚があります。

2025年9月には国際規格ISO/IEC 40500がWCAG 2.2と同内容に改正され、これを受けて日本でもJIS X 8341-3の改正作業が進められています。
今回の改正の経緯やWCAG 2.2で追加される達成基準、今後企業に求められる対応については、EWMグループさんが非常に詳しく整理された記事を書いておりますのでそちらをご参照ください。

[EWMグループ「2026年最新 JIS X 8341-3規格改正のポイントと企業が取るべき対応を解説」]

ここではWeb制作とアクセシビリティ支援の現場から今回の改正について感じていることを書いてみます。

2026年のWebを2008年の達成基準で評価し続けてきた

WCAG 2.0が古いから役に立たないという話ではありません。
代替テキスト、キーボード操作、コントラスト、見出し構造など、現在でもアクセシビリティの根幹となる重要な考え方が数多く含まれています。
ただし2008年と2026年ではWebそのものが大きく違います。

スマートフォンやタブレット、タッチ操作、レスポンシブデザイン、SPA、モーダル、固定UI、複雑なWebアプリケーション。
現在では当たり前になったこれらの利用環境を考えると2008年に作られた達成基準だけを、2026年まで「現行の基準」として扱い続けてきたことには以前から強い違和感がありました。
※このあたりがリベロジックとしてアクセシビリティ対応に乗り出したきっかけでもあります。

WCAGはその後、2018年に2.1、2023年には2.2へと更新されています。
WCAG 2.2では、タッチ操作、ドラッグ操作、フォーカス、認証、入力など、現在のWeb利用により近い達成基準が追加されています。
それでも日本では長い間、行政機関や自治体の仕様書、入札、アクセシビリティ試験などで「JIS X 8341-3:2016」が基準として使われ続けてきました。

2026年のWebサイトやWebアプリケーションを2008年に作られた達成基準を中心に評価する。

制度上そうなっているとはいえ、やはりこれはかなり不自然な状態だったと思います。

誰かが「サボっていた」わけではない

一方で、総務省さんが何もしてこなかったという話ではありません。

JIS X 8341-3:2016は国際規格ISO / IEC 40500との一致規格です。
先ほども触れましたが、日本だけで先に内容を書き換えればよいのだ!という単純な仕組みではありません。
WAICさんは以前からJIS改正に向けた準備を進めWCAG 2.2の日本語訳も公開・更新していますし、現行JISとWCAG 2.1、2.2を同時に目標とする場合の記載方法についても整理されています。私たちも常に注視し参考にさせていただいてます。

そのため「日本では10年間何もしてこなかった」という話ではありません。
単純に制度とWebの進化速度に大きな時間差が生まれてしまったのだと考えます。

行政側もすでにWCAG 2.1、2.2へ動き始めている

行政のWebサイトや調達仕様でも現行JISだけではなくWCAG 2.1やWCAG 2.2まで対象にするケースが増えているようです。
例えばデジタル庁ではJIS X 8341-3:2016の適合レベルAAに加えて、WCAG 2.2のA・AA達成基準のうち現行JISに含まれていない項目についても対応目標を定めています。
調達向けのガイドブックでもモバイル利用など現在のWeb環境を考慮しWCAG 2.2への対応が必要であることが明記されています。

これは良い変化だと思います。

私たちも省庁の入札案件を稀にお手伝いする折に、お客様には「JIS X 8341-3:2016だけではなく、できればWCAG 2.2 AAまで見ましょう」と説明してきましたが、仕様書に書かれていなければその追加工数を誰が負担するのかという話になります。

ここはとてもシビアな問題でした。

価格競争の中で本当にアクセシビリティ品質まで評価できているのか

特に価格の比重が大きい入札では今でも少し疑問があります。
仕様書に「JIS X 8341-3:2016 AA準拠」と書かれていればまずはその条件を満たすことが優先されます。

  • そこからさらにWCAG 2.1や2.2まで確認する
  • 人による詳細な試験を行う
  • 支援技術を使って確認する

当然それだけの工数と専門知識が必要になります。
一方で価格競争を行いながら、

「アクセシビリティをどこまで丁寧に実装しどこまで丁寧に試験したか」

まで評価できているのかは案件によってかなり差があり今でも分かりにくいところです。
調達仕様書に「アクセシビリティ対応」と書くだけではなく、どの基準をどの範囲でどんな方法で試験しその品質をどう担保するのかえを含めて考える必要があるのではと思われます。

ツールだけでアクセシビリティ試験は終わらない

miCheckerをはじめとするチェックツールにも重要な役割があります。
※こちらも総務省さんにバージョンアップ版開発を頑張ってほしいところです。

私たちが開発しているLente Scanも同じです。

自動化できる部分の精度を可能な限り高めることはできますが、最終的には人が確認しなければ判断できない達成基準があります。

例えば、

  • キーボードだけで操作を完了できるか
  • フォーカスが適切な順序で移動するか
  • コンポーネントの名前・役割・状態が支援技術に正しく伝わるか
  • ドラッグ操作以外の操作方法が提供されているか
  • 認証方法に過度な負担がないか

といった確認です。

WCAG 2.2への対応が進めばこのような実装や操作まで踏み込んだ試験の重要性はさらに高くなります。
HTMLを見るだけでは足りず、DOMやARIAを確認したり、スクリーンリーダーなどの支援技術を利用したりする必要がある項目もあります。

アクセシビリティ試験はチェックリストに丸をつけるだけの作業ではありません。
特に手動試験では達成基準の理解に加えて実装や支援技術に関する知識も求められます。
人が確認する以上、検査員による見落としが起こることも当然あります。

それぞれの特性を理解したうえで、できるだけ見落としを減らしていくことが重要だと考えてます。

100点を取ることより100点に近づけ続ける

Webアクセシビリティを常に100%の状態に維持することは簡単ではありません。

Webサイトは生物です。
CMSからコンテンツが増え、UIが変更され外部サービスが追加されることもあります。
重要なのは一度試験して「準拠しました」と宣言して終わることではなく、問題を見つけ改善し、再び確認する仕組みを持つことです。

規格や試験はその状態を担保するためにあるものだと思いますが、その物差し自体が古ければ、どうしても現場の改善にも限界がでてきてしまう。
そういった意味でも今回のJIS X 8341-3改正は単なる「約10年ぶりの規格改正」「実質18年ぶりの更新」以上の意味があると感じています。

長い間2008年を土台にしていた日本のWebアクセシビリティ基準がようやく現在のWeb環境に近づく!

規格に対応するためにアクセシビリティを行うのではなく実際に使えない人を減らすために規格を使う!

今回の改正が1つの転換点になればと期待しております。

この記事を書いた人

社長でありながら常にカウンターパート。新しい技術を理解したり、何かが便利になる瞬間に喜びを感じ、ひたすら没頭する現場大好き人間。未来の技術にもわくわくしながら、いくつになっても新しい体験を楽しんでいたい。

森本 忠典

プロジェクトマネージャー / ディレクター / 2007年創業

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