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WCAG 3.0の新しいドラフトが公開されました。今回は何が変わった?

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2026年9月10日付で、WCAG 3.0の新しいWorking Draft(作業草案)と、その解説文書(Explainer)が公開されました。

以前の記事「WCAG 3.0で何が変わるの?」では、WCAG 2.xからの主な変更点をご紹介しました。その後も検討が進み(3月にも一度ドラフトが更新されています)、今回のドラフトでは「適合しているかどうか」をどう判定し、「改善の取り組み」をどう伝えるかという部分が大きく見直されています。

前回ご紹介した内容からの変化と、現在の検討状況を中心に、主なポイントをまとめます。

※以下は2026年9月10日版の草案に基づく内容です。正式勧告までに変更される可能性があります。

はじめに:用語の整理

前回の記事では、WCAG 2.xの「達成基準」に代わるものとして「アウトカム(Outcomes)」という用語をご紹介しました。現在のドラフトでは構造が整理されています。主な用語と役割は次のとおりです。

用語

役割

ガイドライン(Guidelines)

利用者の視点で、実現したい成果(アウトカム)を示す

要件(Requirements)

テスト可能な規定。コア要件と補足要件に分かれる

アサーション(Assertions)

アクセシビリティを改善するために行っている手順や取り組みを、組織などが文書化して表明する

メソッド(Methods)

要件などを満たすための、技術ごとの具体的な方法を示す参考情報

「適合」と「改善の進み具合」を分ける方向に

今回の最大の変更は、適合の判定と、改善の進捗の伝え方を切り離す案です。

前回の記事でご紹介した2025年9月版、そして今年3月に公開された版までは、ブロンズ/シルバー/ゴールドの3段階の「適合レベル」が示されていて、ブロンズが最低限の適合水準でした。今回のドラフトでは、対象範囲の「コア要件」をすべて満たすことが適合の条件で、適合のレベルはひとつだけになっています。

そのうえで、適合に至るまでの途中段階と、適合を超えた取り組みを「報告ティア(Reporting tiers)」として伝える仕組みが提案されています。

コア要件に付く4つのタグ

報告ティアの土台になるのが、コア要件のひとつひとつに付けられる次の4つのタグです。

タグ

満たさない場合に起きること

Physical harm(身体的危害)

障害のある人に、直接的な身体的危害を及ぼしうる

Risk(リスク)

金銭・医療・法的・プライバシー・セキュリティ上のリスクを不当に高める

Barrier(障壁)

先に進めなくなる

Friction(摩擦)

利用が妨げられる。複数重なると先に進めなくなることもある

報告ティアの一覧

報告ティア

必要な規定

1:Avoid physical harm

Physical harm と Risk のコア要件を満たす

2:Foundational access

上記に加え、Barrier のコア要件を満たす

3:Conformance(適合)

上記に加え、Friction のコア要件を満たす(=コア要件をすべて満たす)

4:Bronze

適合に加え、補足要件(数は未定)と、コンテンツに関するアサーションを満たす

5:Silver

Bronze より多くの補足要件・コンテンツに関するアサーションを満たす

6:Gold

さらに、組織に関するアサーションを満たす

前回の記事では、ブロンズを基本的な適合水準としてご紹介しました。今回の案では、コア要件をすべて満たした段階が「適合(ティア3)」となり、ブロンズはさらに上の取り組みを示す位置付けになっています。

適合に至っていない場合も、「身体的危害に関する要件に対応できた」「障壁に関する要件まで対応が進んだ」といった形で、どこまで改善が進んでいるかを伝えやすくなりそうです。

ただし、まだ「参考情報」の段階

注意したいのは、この報告ティアが載っている「Reporting」の章が、ドラフトの中で「参考情報(informative・非規範)」と位置付けられていて、成熟度も方向性を検討する「Exploratory」だという点です。一方、「コア要件をすべて満たせば適合」と定めた「Conformance」の章は規範(normative)で、成熟度も一段進んだ「Developing」です。

つまり、適合の条件と、進捗を報告する方法では、検討の成熟度が異なります。

点数による評価も、引き続き検討中

前回の記事では、各アウトカムを0〜4点で評価する考え方をご紹介しました。今回のドラフト本文には、この5段階評価は載っていません。

その代わり、解説文書(Explainer)には、報告ティアの別案として「点数(スコア)」を使う方式が掲載されています。

  • 先ほどの4つのタグを重みとして使う(Physical harm・Risk=3点、Barrier=2点、Friction・その他=1点)
  • 対象範囲の中で満たした規定の重みの合計を、全体の重みの合計で割り、達成率(%)として示す
  • 適合後は、満たした補足要件・アサーションの数に応じて、ブロンズ/シルバー/ゴールドを付与する

ティア案と点数案は、どちらも同じタグを土台にしていて、主な違いは、段階で伝えるか、達成率で伝えるかという点です。ワーキンググループは、どちらの方式が有望か、あるいは別の方式が必要かについて、公開コメントを求めています。

「適合(conformance)」と「法令遵守(compliance)」は別もの

今回のドラフトには、「適合と法令遵守は同じものではなく、歴史的に混同されてきた」という編集者注があり、WCAG 3.0では次の3つを分けて提供するとしています。

  • 規範としての、狭く定義された適合モデル
  • 参考情報としての、適合に向けた/適合を超えた進捗の測り方・報告の仕方
  • 政策立案者向けの、WCAG 3.0を規制に使う際の助言

たとえば「規制当局が一定規模以上の組織にシルバーを求める」といった使い方も、例として挙げられています。国内でJIS X 8341-3との関係を気にされる場合も、「規格への適合」と「法令や調達要件で何を求めるか」は別のレイヤーとして設計されている、と考えるとわかりやすいと思います。

テキストの読みやすさやメディアの要件も具体化

個別の要件にも追加や整理が進んでいます。

テキストの見た目(Text appearance)

  • 行長・行間・書体・文字サイズ・字間・大文字化・ハイフネーションなど、読みやすさに関する要件が整理されました
  • 行間や字間など、一部の具体的な数値はまだ未定です
  • W3Cは、非ラテン文字の言語・文字体系に関する研究や専門家の協力を求めています

メディア(書き起こし・字幕・音声解説・手話)

  • それぞれのガイドラインに、コア要件と補足要件が整理されました
  • あわせて「スタイルガイドを持っている」「必要とする利用者とユーザビリティテストを行った」「制作者がレビューした」といったアサーションが並んでいます

わかりやすい言葉(Clear language)

  • 略語の説明や、長文への要約の提供などがコア要件として提案されています
  • 数値の一部は仮置きで、多言語への対応はW3Cの国際化(i18n)関連グループと連携して検討中です

コントラストの評価方法は、今後の検討に注目

前回の記事では、新しいコントラスト評価の考え方としてAPCAやLc値をご紹介しました。今回のドラフトでは、コントラストの計算アルゴリズムは「未決定」と明記されています。

要件の文面は「アルゴリズムに文字サイズ・太さの要素が含まれる」ことを前提に書かれていますが、含まれない場合は要件側に追記するとされています。また、赤緑の色覚多様性をアルゴリズムで扱えない場合は、別の要件が必要になるかもしれないという注記もあります。APCAの採用を含め、最終的にどのような仕組みになるかは、今後の議論次第です。

前回ご紹介した内容と、現在の検討状況

前回ご紹介した内容

現在の検討状況

アウトカムを中心とした構造

ガイドラインが利用者の成果を示し、要件・アサーションなどが支える構造に整理

ブロンズ/シルバー/ゴールドの適合レベル

適合水準はひとつ。ブロンズ以上は適合を超える「報告ティア」として提案

ブロンズが基本的な適合水準

コア要件をすべて満たした段階を「適合」とする案

各アウトカムを0〜4点で評価する考え方

Explainerに、タグの重み付けによる達成率を使う別案を掲載

APCAやLc値によるコントラスト評価

採用するアルゴリズムや基準値は引き続き検討中

まだまだ変わっていくWCAG 3.0

今回の更新を見ると、WCAG 3.0は、要件への適合をシンプルに定めたうえで、そこに至る途中経過や、適合を超えた組織の取り組みも伝えられる仕組みを目指していると感じます。

一方で、評価方法も具体的な数値も、まだ決まっていない部分が多くあります。ワーキンググループは年2回のドラフト公開を目指しており、今回の内容も、これからの議論で変わっていくと思います。

ドラフトへの意見は、GitHubの w3c/wcag3 リポジトリでissueを立てる形で受け付けられています。

また、W3Cは研究や知見の提供も求めています。なかでも「テキストの見た目の非ラテン文字対応」は、日本語圏の私たちに直接関わるテーマです。特に縦書き言語の行間などについて研究や知見が求められています(Evidence and Research Needed)。

WCAG 3.0が固まるまでにはまだ時間がかかります。弊社では、現在の基準に基づく対応を進めながら、策定の動きを引き続き追いかけていきます。

参考情報:

この記事を書いた人

DTPからWebの世界へ飛び込み、気づけばマークアップもフロントエンドもディレクションもアクセシビリティもこなす"技の仙人"。リベロジック創業期からマルチに活躍し、今や社内の生き字引的存在。最近は「アクセシビリティ対応、もっとAIに頼れないかな?」と、プロンプトを駆使した効率化の探究にハマり中。技術も思考も、まだまだ進化中

二俣 歩

IAAP認定ウェブアクセシビリティスペシャリスト(WAS) / マークアップエンジニア / フロントエンドエンジニア / ウェブディレクター

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